
静岡県富士宮市。雄大な富士山の麓に広がるこの地で、三百余年の歴史を刻むのが富士錦酒造です。清らかな富士の伏流水を仕込み水に、伝統の技で日本酒を醸し続ける老舗蔵です。
富士錦酒造が今、情熱を注いでいる酒米があります。それが、静岡県が誇る酒造好適米「令和誉富士」です。
誉富士――。その名は、まさに「富士山の誉れ」となるような、高品質な酒米を、という願いを込めて名付けられました。
静岡県産米への熱い想い
かつて、静岡県では静岡の風土に適した酒造好適米が開発されておらず、県外の米を仕入れて日本酒を造らざるを得ない状況でした。しかし、良質な水に恵まれた静岡の地で、地元産のお米で日本酒を造りたい。そんな熱い想いを胸に、静岡県農業試験場(現:静岡県農業技術研究所)は新たな酒造好適米の開発に着手しました。
そして10年の歳月を経て、1999年に誕生したのが誉富士です。山田錦を親に持つ誉富士は、心白が大きく、タンパク質含有量が少ないという特性を持ち、まさに静岡の風土に合った酒米と言えるでしょう。そして、更に品種改良をした令和誉富士がその後継を担っています。
令和誉富士が醸し出す、多彩な味わい
令和誉富士で造られた日本酒は、どのような味わいなのでしょうか?
一口に誉富士と言っても、その味わいは実に多彩です。
- 淡麗辛口: 令和誉富士の最大の特徴とも言えるのが、この淡麗辛口。すっきりとした口当たりで、キレの良い後味が楽しめます。
- フルーティーな香り: リンゴやバナナを思わせるフルーティーな香りは、令和誉富士ならではの魅力。
- 穏やかな旨味: 淡麗辛口でありながら、米本来の旨味もしっかりと感じられます。
令和誉富士は、まさに「旨味」と「キレ」のバランスに優れた酒米と言えるでしょう。
そして、同じ令和誉富士を使っても、造り手や酒蔵、酵母や精米歩合、仕込み方法によって、その個性が大きく変わります。
富士錦酒造が描く、令和誉富士の未来
富士錦酒造では、早くからかつての誉富士の可能性に注目し、その魅力を引き出す日本酒造りに取り組んできました。
「富士錦 特別純米 ほまれふじ」は、低温発酵でじっくりと醸した特別純米酒。誉富士の持つ穏やかな旨味と、キレの良い後味が調和した、食中酒としても最適な一本です。
富士錦酒造では、他にも季節限定の令和誉富士を使ったお酒など、様々なラインナップを展開しています。それぞれの味わいの違いを楽しむのもおすすめです。
杜氏たちは、日々研鑽を積み重ね、新たな可能性を追求しています。
「地元の素材を活かした、最高の日本酒を造りたい。」
そんな情熱が、富士錦酒造の酒には込められているのです。
令和誉富士が拓く、静岡の酒文化
令和誉富士は、まだ歴史の浅い酒米ですが、その可能性は無限大です。静岡県内では、多くの酒蔵がこれを使った日本酒造りに挑戦し、それぞれ独自の味わいを追求しています。
令和誉富士は、静岡県を代表する酒米として、そして静岡の酒文化を未来へ繋ぐ架け橋として、ますます輝きを増していくことでしょう。
この記事を読んで、酒米に興味を持っていただけたら幸いです。機会があれば、ぜひ一度、令和誉富士で造られた日本酒、特に富士錦酒造のお酒を味わってみてください。富士の麓で生まれた奇跡の酒米が織りなす、奥深い味わいの世界に、きっと心奪われることでしょう。